今年から始まった相続土地国庫帰属制度はどのような制度?どのような場合に使える?

  • 相続時に土地を手放す方法として、国が制度として創設したもので、とても有意義だが、国庫帰属の要件は厳しいので、利用できる状況は限られそう。
  • 無料で引き取ってくれるわけではなく、一定の負担金が必要
  • 運用後、制度の更なる発展に向け、必要な見直しも検討されそうなので、今後の制度改善に期待

導入の背景と制度概要

土地利用のニーズ低下により、土地を相続したものの、管理の煩雑さや遠方の土地などで管理ができないなど、土地を望まず取得した所有者の負担感が増えている状況。また、相続したが特に登記の変更などもせず、そのまま放置されている所有不明土地が増加していることから、一定の要件の下、国庫に帰属されることで所有者の不明化、管理不全化を防ぐために創設されました。

そのような土地が対象?対象にならないものは?

まずは自身が一部又は全部を相続や遺贈により取得した土地であることで必要です。そのうえで、以下のような土地は申請できない、申請が不承認となる土地になります。

×建物が存する土地  ×担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

×通路その他の他人による使用が予定される土地として、①現に通路の用に供されている土地②墓地内の土地③境内地④現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地

×特定有害物質により汚染されている土地

×境界が明らかでないなど所有権の帰属などに争いがある土地

×管理や処分するのに過分の費用、労力を要するもの(崖がある、工作物や樹木などがある、など)

法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp)

手続きの流れ

(法務省 相続土地国庫帰属制度の概要のホームページより)

申請書と添付書類としての図面を作成し、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局

地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)へ申請することとなります。そののち、法務局にて

現地調査などの要件審査を行い、認められると国庫に帰属することとなります。その際、負担金の納付が必要です。

現地調査などを要するため、標準処理期間は8か月(東京法務局)です。

(審査手数料 土地一筆当たり14,000円)

また、こちらの申請は本人(もしくは法定代理人)が申請する必要があり、任意代理は認められておりません。

申請書の書類作成については、弁護士、司法書士、行政書士が代行することが可能となっております。

負担金とは

国庫に帰属させる場合に必要となる負担金ですが、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出して、10年分の土地管理費相当額です。

申請する土地が森林以外の場合、原則20万円ですが、土地の種類により負担金額が上がります。

法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金 (moj.go.jp)

こちらの制度は上記のような要件に合致しないと認められないので(管理するコスト負担が重いなどの土地だと認められない可能性など)土地の現在の状況を踏まえて、通常の売買や相続放棄などと共に、相続時に土地を手放す手段の一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。