日本で生活し働く外国人にとって「在留資格」は欠かせない存在ですが、不適切な理由で取得・更新を行うと在留資格が取り消される場合があります。在留資格取消制度とはどのような制度なのか、手続きの流れや取り消しの理由について具体的なデータや法律を基に解説します。適切な対応をするための重要な知識を身につけましょう。
在留資格取消制度とは?概要を理解しよう
在留資格取消制度は、日本において在留資格をもって在留する外国人が、偽りその他不正の手段により在留資格を得た場合や、在留資格に基づく活動を行なっていない、在留中に行った行為などにより外国人が日本に在留することを認めることが適当でない場合などに、法務大臣がその外国人の在留資格を取り消すことができる手続きです。この制度は、主に以下のような目的で運用されています。
• 日本国内の在留制度の公正な運用。
• 外国人の適切な在留活動の確保。
• 不正行為の抑止。
在留資格取消の手続きの流れ
在留資格取消のプロセスを以下のフローチャートで示します。
(出典 出入国在留管理庁 在留資格の取消しHPより)
(1)(2) 偽りその他不正の手段により上陸許可の証印等を受けた場合
(5)在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留している場合
手続きのポイント
- 意見聴取の重要性:この段階で正当な理由や証拠を提示すれば、取り消しが免れるケースもあります。
- 在留資格が取り消されても一定期間(30日を超えない範囲)適法に在留することが容認されて、任意の出国を可能にしています。
在留資格取消の事由とは?
在留資格が取り消される具体的な事由は、出入国管理及び難民認定法第22条の4に定められています。以下は主な取り消し事由です。(出入国管理及び難民認定法第22条の4)
- 偽りその他不正の手段により在留資格を取得した場合
- 在留資格に基づく活動を3か月以上行わない場合(正当な理由がない場合を除く)
- 在留資格に基づかない活動を行っている場合
- 「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の資格を持つ者が、その活動を6か月以上行っていない場合(正当な理由がない場合を除く)
- 中長期在留者が虚偽の住居地を届け出た場合
在留資格取消の現状:事由ごとの統計と傾向
近年、在留資格取消件数は増加傾向にあります。法務省の統計によると、以下のような傾向が確認されています。
- 2022年:取消件数1,240件
- 第6号(在留資格に応じた活動を3か月以上行なっていない) 81.5%
- 第5号(在留資格に応じた活動を行なっていない、行おうとしている) 14.3%
- 第2号(虚偽申請) 2.5%
- 2023年:取消件数1,240件
- 第6号(在留資格に応じた活動を3か月以上行なっていない) 84.5%
- 第5号(在留資格に応じた活動を行なっていない、行おうとしている) 10.3%
- 第2号(虚偽申請) 3.4%
活動実態の欠如などが依然として最も多い事由。特に技能実習生の事例が目立つ。
(出典: 法務省「在留資格取消事由別統計」)
まとめ:適切な在留資格の維持の重要性
在留資格取消制度は、日本で適切に生活・活動する外国人のために重要な役割を果たしています。しかし、制度を知らずに違反行為をしてしまうケースも少なくありません。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 正確な情報で申請を行うことが最優先
虚偽申請が最も多い取消理由となっているため、書類の内容は正確である必要があります。 - 日常的な在留資格の適正管理
学生なら通学実績、働く場合は契約内容を守ることが求められます。 - 万が一の際は速やかに専門家に相談
取消通知を受けた場合でも、聴聞で正当性を主張できる場合があります。
外国人の方だけでなく雇用する企業にとっても、この制度への理解は欠かせません。
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東京都中央区の茅場町に事務所を構える当事務所では、在留資格取得申請に関する手続きはもちろん、在留資格更新のサポートも提供しています。ご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお問い合わせください。