機関設計とは?会社設立時に考慮すべきポイント 中小の事業者向け

会社を設立する際、「機関設計」と呼ばれる組織体制を決定することが重要です。特に株式会社の場合、株主や取締役などの役員構成をどのようにするかが会社運営に影響を及ぼします。ここでは、会社法の定義に基づく公開会社と非公開会社の違いや、中小企業が非公開会社を選ぶメリット、人数に応じた機関設計のパターンについて詳しく解説します。

公開会社と非公開会社の違い

会社法では、以下のように公開会社と非公開会社が定義されています。

  • 公開会社:発行済株式のすべてに譲渡制限が付されていない会社です(会社法第2条5号)。

公開会社では、取締役会の設置が義務付けられ、原則として監査役も設置が必要です。株式が自由に取引可能であるため、外部からの資本調達がしやすく、株主の広がりを意識した機関設計が求められます。

  • 非公開会社:発行済株式の一部または全部に譲渡制限が付されている会社です(会社法第2条5号)。

非公開会社は、取締役会や監査役の設置義務がないため、機関設計の自由度が高く、シンプルな組織での運営が可能です。中小企業では、非公開会社の形態が一般的に選ばれています。

なお、会社法上の公開会社のほとんどはすでに上場している会社か近い将来に上場をする予定である会社かと思われます。

中小企業が非公開会社を選ぶ理由

こちらでは、ほとんどの新規設立の株式会社が対象となると思われる非公開会社について、中小の会社が非公開会社を選択する理由をご紹介します。

1. 株式の譲渡制限による安定した株主構成

  • 株式の譲渡制限を設けることで、創業者や主要な経営メンバーが株式を確保し、経営権の流出を防ぎます。これにより、創業メンバーの意向に沿った経営が可能です。
  • 特に外部からの買収リスクを回避できるため、経営の安定が図れます。

2. 機関設計がシンプルでコストが抑えられる

  • 非公開会社では、取締役会や監査役を必ずしも設置する必要がなく、少人数の体制での運営が可能です。その結果、役員報酬や設置費用が削減され、効率的な経営が実現できます。

3. 迅速な意思決定が可能

  • 非公開会社は株主数が限られているため、意思決定のプロセスが簡略化されます。これにより、スピーディな対応が可能です。

4. 公開会社に比べ法的要件が少なく、設立が容易

  • 公開会社では株式の公開にあたって法的要件が増え、設立が複雑になりますが、非公開会社は手続きが簡素化され、初期の運営負担が軽減されます。

機関設計のパターン(大会社以外で非公開会社の場合)

非公開会社の機関設計は、会社の規模や構成員の人数に応じて柔軟に設定可能です。以下に人数別の機関設計パターンを示します。

※こちらでは大会社(資本金5億円以上又は負債総額が200億円以上)以外の会社を前提にしております。

<取締役が1名で設立する場合>

よくあるケース

必須機関:株主総会+取締役

特徴:最も単純な機関設計です。意思決定が迅速で、シンプルな組織運営が可能

<取締役が2.3.名で設立する場合>

よくあるケース①

必須機関:株主総会+取締役

特徴:最も単純な機関設計です。意思決定が迅速で、シンプルな組織運営が可能

よくあるケース②

必須機関:株主総会+取締役2名以上+監査役1名(若しくは会計参与)

  • 代表取締役:複数の取締役がいる場合、取締役の中から代表取締役を選任することが可能。選任しなくても構わない。
  • 監査役:内部統制を強化する目的で監査役を設置するケース。

特徴:代表取締役を1名選任することで経営を効率化。

内部統制の強化を目的に監査役を設置するケースもあります。

<4人以上で設立する場合>

よくあるケース

  • 必須機関:株主総会+取締役会(3名以上)+監査役(1名以上)(若しくは会計参与)
    • 取締役会の設置:取締役が3名以上いる場合、取締役会を設置することが可能です。取締役会を設置することで、意思決定の場を設け、また、代表取締役1名を選任します。
    • 監査役:取締役会が設置された場合、内部統制を強化するために監査役を設置します。

なお、監査役の職務内容は業務監査と会計監査ですが、非公開会社(監査役会又は会計監査人を置く会社を除く)の場合には、定款の定めにより監査役の職務を会計監査に限定することができます。

まとめ

機関設計は、会社の規模や公開・非公開の区分に応じて異なる要件が求められます。中小企業や個人設立では非公開会社を選ぶことで、簡素な組織体制で効率的な運営が可能です。公開会社として成長を目指す場合も含め、将来的な経営方針を考慮し、適切な機関設計を進めることが大切です。

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